帰化とは
帰化をひと言で言えば、他国の国籍を取得することです。具体的にいえば、モンゴル国の国籍を持つ外国人がモンゴル国の国籍を離脱し日本の国籍を取得することを「日本に帰化」するというわけです。大相撲の横綱白鵬が昨年9月に日本国籍を取得して「日本に帰化」したというニュースは未だ耳に新しいと思います。つまり、その国に帰化するということは、すなわちその国の国民になるということです。
国籍に関して日本では、憲法10条に「日本国民たる要件は、法律でこれを定める」と規定し、「国籍法」にその内容を委ねています。国籍法によれば、出生の時その父母のいずれかが日本人であれば、その子は日本国籍を取得します(血統主義)。また、父母が誰だかわからないとき、もしくは父母が国籍を持たないとき、日本国内で生まれた子は日本国籍を取得します(生地主義)。このように日本は原則として血統主義を採用し、補完的に生地主義も認めています。生地主義とは自国内で出生したあらゆる子にその国の国籍を与えるとする方式ですが、その生地主義を採用する国はアメリカ合衆国を始め、フランス、カナダ、ニュージーランド、ブラジル等の国々があります。そのため日本人を父母とする子がアメリカ合衆国等の出生地主義をとる国で出生すると、その子は日本とアメリカ合衆国の二つの国籍を取得することになります。これを二重国籍といいます。国籍法では二重国籍について、外国の国籍を有する日本国民は、外国及び日本の国籍を取得した時が20歳未何の場合は22歳までにどちらの国籍を選択するかを決めなければなりません。
帰化と永住者との違い
日本国内で永年暮らすことができるという点では、永住者資格も帰化も同じように思えますが、永住者資格はあくまで外国人として日本に滞在するということで、日本国民になることができる帰化とは全く違うものだということができます。そのため、永住者資格保持者は選挙権・被選挙権や公的機関への就職に一部制限が設けられています。ちなみに、永住者資格の申請先は法務省の出入国在留管理庁であるのに対して、帰化の申請先は法務省の法務局になります。
帰化の申請要件
帰化については国籍法第4条で、日本国民でない者(外国人)は、帰化によって日本の国籍を取得できるとし、帰化をするには、法務大臣の許可を得なければならない、と規定しています。そして第5条で、法務大臣が帰化を許可することができる条件を以下の6項目で示しています。
①引き続き5年以上日本に住所を有すること
②20歳(令和4年改正法施行後では18歳)以上で本国法によって行為能力を有すること
③素行が善良であること
④自己又は生計を一にする配偶者その他の親族の資産又は技能によって生計を営むことができること
⑤国籍を有せず、又は日本の国籍の取得によってその国籍を失うべきこと
⑥日本国憲法施行日以降、日本国憲法やその下でに成立した政府を暴力等で破壊することを企てる等の行為をしたことがないこと
国籍法では以上の6項目を列挙していますが、
⑦として、日本語の読み書きができることが条件としてあげられているようです。日本語の読み書きができるとは、概ね小学校3年生程度の読み書きだと言われています。
この①~⑦までの要件が一般的な帰化の要件ということで「普通帰化」の要件と呼ばれています。
普通帰化の要件の緩和
日本で生まれた人や配偶者が日本人の場合、帰化の要件は緩和されます(簡易帰化)。
ア.日本人の子で引き続き3年以上日本に住所又は居所を有する人(但し養子は除く)
イ.日本で生まれた人で、3年以上日本に住所又は居所を有し、父母が日本生まれの人(但し養父母は除く)
ウ.引き続き10年以上日本に居所を有する人
以上の人は「引き続き5年以上日本に住所を有する」という帰化要件が緩和されます。ここに出てくる「住所」と「居所」の違いは、「住所」が民法第22条で規定されている「生活の本拠」とするのに対して、「居所」は生活の本拠とはいえないが、多少の期間継続して居住している場所のことです。
エ.日本人の配偶者である外国人で、引き続き3年以上日本に住所又は居所を有し、現在も日本に住所を有している人
オ.日本人の配偶者である外国人で、婚姻の日から3年を経過し、引き続き1年以上日本に住所を有している人
以上エ・オの人は、普通帰化の①・②の要件が緩和されます。すなわち、引き続き5年以上日本に住所を持っていなくとも、また20歳(改正後は18歳)未満でも帰化の要件になります。
カ.日本人の子で日本に住所を有する人(但し養子を除く)
キ.日本人の養子で引き続き1年以上日本に住所を有し、縁組の時に本国で未成年であった人
ク.元日本人で日本に住所を有する人(但し日本に帰化した後日本国籍を失った人を除く)
ケ.日本で生まれ、かつ出生の時から無国籍で引き続き3年以上日本に住所を有する人
以上カ・キ・ク・ケの人は、普通帰化の①・②・④が緩和されます。
帰化をお考えの方へ
帰化は要件さえ満たせばすぐに許可されるというではありません。また、要件を満たしていても、それを証明する資料が必要になり、その種類は50種類に及ぶこともあり、収集には大変な手間と時間がかかります。帰化をお考えの方は、是非とも行政書士のような士業の専門家に相談されることをお勧めします。
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